交 流 会



フォーラム「企業が求める人材像」(2012)の開催報告

第4回 フォーラム「企業が求める人材像」
−企業における研究入門−
2012年10月27日(土)
15:00-17:00、57号館201教室

主催:早稲田応用化学会・交流委員会

10月27日(土曜日)、第4回フォーラム「企業が求める人材像」を開催しました。
「企業が求める人材像」は、企業でご活躍中の男性先輩および家庭と仕事を両立させてご活躍中の女性先輩をパネリストとしてお招きし菅原義之応用化学科教授をモデレーターとしたパネル討論主体のフォーラムです。毎年異なったテーマで実施しており、4年目を迎えた今回は学生からの要望が強かった“企業における研究入門”をテーマとし、パネリストの年代も新35(1985学部卒)から新53(2003学部卒)と幅広く構成して企画しました。
応化会河野交流委員長のオリエンテーション、下井副会長の挨拶の後にパネル討論を開始し、多くの学生(65名)や若手OB・OGが参集したフォーラムは、予定していた2時間では足りないほど熱気に満ちたもとなりました。
フォーラム終了後は63号館カフェテリア馬車道に場所を移し、河村会長の挨拶、桐村主任教授による乾杯の後、軽食を取りつつ、パネリストを囲んで交流・交歓が続きました。 


<パネリスト>
左から、菅原義之教授、宮田浩克氏、笹目由紀子氏、小野昇子氏、丹羽大介氏、今村圭佑氏

パネリストプロフィール(学部卒業年次順)
<パネル討論概略>

5人のパネリストから「自己紹介」を兼ねて「会社を選んだ理由」を皮切りにパネル討論が開始され、そこでは大学で学んだ専攻を生かす企業を目指しつつも、現在は研究開発の中核を担う部門へ転身する柔軟性が表れておりました。
「企業における研究のポイント」では、当然ながらコスト意識・利益確保が求められ、研究は入口でゴールは販売、研究計画策定では成果と期日が必須要件でスピード・優先順位などが必須、といった大学における基礎研究との違いがパネリストの経験を踏まえ語られました。また、製品ができるまでは、シーズから商品化まで液晶や炭素繊維で30年、創薬開発で20年、製品サイクルが短いといわれる半導体でも15年を要する息の長い研究体制で取り組まれていること、新規触媒開発などの新しい製品開発は一生に一度出会えるかのテーマであり研究者としての充実感があることなどが実例として語られました。

「企業における基礎研究」では、企業・業種によって取り組みに相違はありますが、学会発表等の論文で自社の技術力および企業価値をアピールするとともに、一緒にやってくれるアライアンスメンバーを探す効果も期待していることが述べられました。ただ基礎研究はすぐに企業の業績に繋がらないため、中央研究所が規模縮小されているなどの厳しい現実も紹介されました。
「研究マインドと企業方針のコンフリクト」では、基礎研究は、ゆっくり・確実性が求められるが、開発ステージになるとスピード要求され、研究・製造・営業のそれぞれの立場から意見の相違が顕在化してくることが多い現実が紹介されました。こうしたことから仲が悪いと思われがちですが、ゴールは同じなので、結果が出れば全て良しとするなど企業における部門間の生々しいやり取りが紹介されました。
「女性企業人の状況」については、男女比較というよりは成果で評価されるので、女性だから仕事しづらいなどの心配はいらない、出産・子育てなど特有な時期は大変だが、女性を個性の一つと捉え男性に勝つとかよりはその個性を生かせる場面を探していく方が良いなど、パネリストご自身の経験を基にお話し頂きました。

次に「企業人として必要なスキル」として、コミュニケーション力・検索力・プレゼン力・書類作成能力・問題発見力・問題解決力等について話題が移りました。「コミュニケーション力」については、企業はチームで活動し、チームはエキスパートの集団であり各々の立場を理解し議論する事が大事であるが、人間関係の基本である日常の挨拶すら出来ないようでは論外であるとの指摘がありました。
「検索力」については、外部に信頼できる情報ソースが必要で、自分にしか得られない情報を取ることが重要である。論文・文献の検索には大学の環境は恵まれており、検索のテクニックを在学中に高めておくことが必要との助言がありました。
「プレゼン力・書類作成能力」については、プレゼン力は研究予算確保のためには必要不可欠な要素であることが指摘されました。また、文書作成は日々の報告などに重要であるので、文書作成の基礎となる語彙、表現力など大学時代のレポート作成を通して学ぶ事が大切との指摘がありました。
「問題発見力、問題解決力」については、解決力と発見力を併せ持つ人は少なく、課題提起となるとその能力を持つ人は極めて少ないとのコメントがありました。問題発見力を身につけるには、先入観をすてて他の研究者や研究に直接関係がない人ともよく対話話して自らが情報を取りに行く事が大切であり、問題解決力を身につけるには、理解した知識・使える知識を駆使し、自分の意見を正しく伝えることが企業における研究人として必要なスキルとのアドバイスが提言され、参加学生は熱心に耳を傾けていました。
「パネリストが一緒に仕事をしたい人」については、他人と違う価値観を持った人、自分自身の観点でしっかりした軸持っている人、他人の仕事を理解できる人、学生時代に没頭できた何かを持っている人、会社のDNAと合致する人などパネリストの貴重な体験をお聞きする事ができました。

最後にパネリストから参加学生に企業の実務経験に基づく示唆に富んだメッセージを頂きました。

等々が熱い口調で語られパネル討論を終了しました。

<総括>

学生の参加状況について、女性の参加者は14%、他科・他専攻の学生は28%、学部生は20%、大学院生は80%、博士課程院生の参加もありましたがやはり修士1年生の参加が多く全体の68%を占めました。サブテーマが“企業における研究入門”であったことから、就職活動を直近に控え研究部門を希望する大学院生、特に修士1年生が興味を持って参加したのではないかと思われます。
参加した学生のアンケートによると、もう少し就活にフォーカスして欲しいなどの要望も有りましたが、ほぼ全員から参考となったという高い評価を頂きました。
今回のフォーラムで印象に残った点や良かった点につての回答は
@「実際に企業で活躍されている若手から中堅まで、先輩パネリストの生の発言が聞けて良かった。」
A「研究開発に限らず、企業ではどの様な人材が必要とされるかが分かり易く聞けて良かった。」
B「企業における研究活動の在り方・取り組み方が理解出来た。」
C「自分で何をやりたいのかをはっきりさせておく必要を感じた。」
D「働く女性の在り方・姿勢を聞けて良かった。」
等の回答もあり、一人一人の学生にとっては有益なフォーラムであったと思われます。

また改善すべき点としては
@「パネリストに博士が多かったので、修士の方の割合を増やしてもらえると、多くの学生にとってキャリアの面で参考になる。」
A「応化会主催のフォーラムで有り、もっと専門性を出して欲しかった。」
B「参加学生は早大生しかいないので、もっとフランクな話があっても良かった。」
C「途中で学生側からの質問や意見を言えるようにして欲しい。」
D「パネリスト同士のディスカッション等による議論の活性化」
等の多くの意見も頂きました。今後の参考にしたいと思います。 お忙しい中ご尽力頂きましたパネリストおよびモデレーターの皆様方にはあらためて厚く御礼を申し上げます。

懇親会スナップ写真は→こちら

(文責:交流委員会 井上凱夫、河野善行)

「フォーラム「企業が求める人材像」(2011)の開催報告は→こちら
「フォーラム「企業が求める人材像」(2010)の開催報告は→こちら
「フォーラム「企業が求める人材像」(2009)の開催報告は→こちら