2011年度早桜会(早稲田応化会関西支部)第2回懇話会報告

(各画像は、クリックすると拡大表示されます)

2011年度早桜会第2回懇話会を12月3日(土)15:00〜17:00大阪中央電気倶楽部で開催しました。今回の講師は、住友化学株式会社の斎藤幸一氏(83年卒)で、「ES細胞とiPS細胞:最前線とその未来」と題して今話題の研究に関して講演いただきました。


講師の斎藤幸一氏

講師は、入社以来二十余年、一貫して化学物質の安全性研究に携わっている企業研究者で、まず、専門の安全性研究について、わかりやすく資料を使って説明していただきました。特に最近では分子生物学的手法などの進展を背景に、化学物質の毒性や薬効のメカニズムが詳細に明らかになり、試験管などを使った実験動物を使用しない新たな安全性評価方法の開発が進んでいることを説明されました。そのような背景下で、研究ツールとして培養細胞が広く使用され、近年、ES細胞やiPS細胞が注目されていることを報告されました。

ES細胞とは受精卵の初期段階の胚から作製された細胞で、無限に増殖する性質と、様々な体の細胞に変化(分化)する性質を持つ万能細胞です。ES細胞は1981年にマウスから、1998年にヒトから初めて樹立されました。マウスES細胞の研究は、遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)の研究成果で、2007年のノーベル医学生理学賞を受賞したことで有名です。一方、ヒトES細胞は、再生医療などの応用を期待され樹立当時から話題となりました。しかし、ヒトES細胞研究の進展は、倫理的な問題や技術的な問題などで必ずしも満足いくものではありませんでした。このES細胞のもつ問題点の克服を可能にするかもしれないと考えられているのが、最近話題のiPS細胞です。iPS細胞は、2006年に京都大学の山中教授らにより報告された万能細胞で、分化した皮膚などの細胞に3〜4種の遺伝子を導入することにより作製された、ES細胞にそっくりな性質も持つ人工細胞です。iPS細胞は、個々人の普通の分化細胞から作製することから、倫理面や個体差の問題が克服可能と考えられるため、特にヒトiPS細胞の応用研究が脚光を浴びています。


懇話会

講師はES細胞とiPS細胞の樹立の歴史や違いなどを、発表された論文などの資料を使いながらわかりやすく解説され、今後のES細胞とiPS細胞の可能性を、実際の国内外の研究事例をもとに紹介されました。安全性研究への応用に関しては、講師らが実際に国家プロジェクトなどで実施した研究を、投稿論文をもとに解説していただきました。また、参加者の多くが興味のある再生医療応用に関しては、日本の国家プロジェクトの事例、最先端の研究者の研究紹介と今後の見通しなどを、講師の独自のネットワークを介した話題も交えてお話しされました。最後に再生医療の工学分野で最先端研究を進めている、応化出身の東京女子医大岡野光夫教授の細胞シート研究も紹介され、聴衆一同、大変有意義な時間を過ごすことができました。

懇話会終了後は、居酒屋に席を移しての和やかな雰囲気のもと、忘年会を開催しいつものように盛り上がりました。


二次会風景


以上


当日の参加者
津田 實(57) 井上 征四郎(62) 岩本 皓夫(67) 市橋 宏(67修) 田中 航次(67) 辻 秀興(67) 篠崎 匡巳(80) 岡野 泰則(83) 斎藤 幸一(83) 日野 純(84) 和田 昭英(84) 齋藤 広美(85) 脇田 克也(86) 濱田 健一(94) 數田 昭典(01) 澤村 健一(03)

(田中航次 記)

△ページトップへ戻る