竜田邦明教授 藤原賞受賞


 竜田邦明教授が第49回藤原賞を受賞されました。藤原賞は基礎科学と科学技術の発展に大きく貢献した研究者が年に2名しか選ばれない大変権威ある賞です。竜田先生のこれまでの有機合成化学と創薬研究の業績が評価されての受賞となりました。

 竜田先生は、天然生理活性物質(天然物)の全合成(最小単位の原料から天然物そのものを合成すること)に関する世界的権威であり、海外の研究者から「Dr. Total Synthesis(全合成博士)」と呼ばれるほど、多種多様な構造と生理活性を持つ天然物を合成されました。特に四大抗生物質(アミノグリコシド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、β‐ラクタム系抗生物質)のすべての全合成は世界初、そして現在に至るまで唯一の快挙であり、5大陸の最高峰制覇に匹敵するとも言われています。

 竜田先生は「すべては全合成から始まる」をモットーとし、実用化が難しいと言われていた全合成研究を創薬化学の基礎研究へと発展させました。これまで抗がん剤や抗糖尿病薬など4つの医薬品を開発・実用化されております。一般に1つの医薬品を世に出すためには一万個以上の化合物を合成する必要があるとされており、製薬会社の社員でさえ多くの者が一つも医薬品を上市することなく定年を迎えている現状を鑑みると、竜田先生の業績は驚異的であり、本学の教旨にある「学理の応用」の実践と威力を示すものであります。

以上のように、竜田先生は独創的かつ実践的な有機合成を数多く産み出し、有機合成化学及び生命科学に重要な学術的知見を与えるとともに、医薬品産業の発展に大きく貢献されました。現在も、学内外の要職に忙しい中、芸術性と新たな可能性を求めて天然物の全合成研究に取り組まれております。(文責 細川誠二郎准教授)

受賞者挨拶授与祝賀会
左から鈴木正一郎藤原科学財団理事長、安倍晋三前総理、竜田邦明教授、柏原正樹教授